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学校の宿題で出ることも多い音読、お子さんはどのように取り組んでいらっしゃるでしょうか。保護者の中には「うちの子は音読が苦手で、この先いつかうまくできるようになるのかな?」と不安に思っている方もいると聞きます。

今回は、音読とは何か、音読が苦手な場合どのような理由が考えられるのか、音読に取り組みやすくなるためには保護者がどのような工夫をしていけば良いか、について解説します。

音読が苦手な理由

「音読」を行うときには、どのような能力が必要なのでしょうか。

東京大学先端科学技術研究センターの高橋麻衣子氏によると、
”音読は「構音運動による音韻表象の生成→文字の音声情報」+「眼球運動・逐次読み」”
と説明されています。

また、論文「黙読と音読での読解活動における眼球運動の比較」には
”「読解活動とは、字媒体から情報を取得し知識を増やすために重要な活動である」「音読においては、黙読に加えて、構音運動や音声情報のフィードバックなどの加算的な活動が含まれている」”
とあります。

つまり、音読をするときには「目の前の文字情報を声に出して意味のある音にする」力に加え、読むべき文章を正しく目で追う能力が必要であるということですね。

逆にいえば、音読が苦手な子は、このいずれかでつまずいてしまっていることが考えられます。

文字情報から「意味のある音」への変換が苦手

「音韻」つまり、文字を意味のある音声にするためには2つのステップがあるといわれています。それは「字と音を結び付けること」「文字を単語として認識し、意味や読み方を記憶から探してくること」です。

「字と音を結び付けること」が苦手な子の場合、書いてある文字を見たときに頭の中で音声化するのに苦労してしまいます。たとえば「さかな」という文字を見たときに、「さかな」という音が頭に浮かんでいないということです。

また、「文字を単語として認識し、意味や読み方を頭の中の記憶から探してくること」が苦手な子は、1文字ずつ読んでしまい、意味が考えられていなかったり、頭に視覚的なイメージができていなかったりする場合があります。いわゆる「逐次読み」と言われる読み方をしてしまう子もいます。

目で文章を追うのが苦手

目の力が弱く、文章を正しく目で追うのが苦手な子もいます。その場合は、「今どこを読んでいるのか」を見失い、混乱してしまうことが多くなるかもしれません。

文字を読み飛ばしてしまったり、行が変わるときに同じ行を2度繰り返してしまったり、ノートを上手に取れなかったり、といったケースもあります。

音読が苦手な子が取り組みやすくなる工夫

ここからは、音読が苦手な子が少しでも取り組みやすくなるために、保護者ができる工夫を紹介していきます。

文章を文節や単語で分け、強調する言葉を意識する

文を読みやすくなるように、まずは単語または文節で切ってみましょう。

たとえば「ぼくは いちごと だんごむしが すきです。」という文であれば、単語ごとに「ぼく/は/いちご/と/だんごむし/が/すき/です」と切ってあげましょう。

さらに読むときには、単語と単語をつなぐ助詞を強く読むと良いでしょう。先ほどの例であれば「ぼく『は』いちご『と』だんごむし『が』すきです。」といった読み方ですね。

正しい文法における「助詞とは何か」を正確に判断しながら読むのは難易度が高いので、まずは「単語と単語をつないでいるもの」あるいは「文節の最後」という形で意識するのがおすすめです。

1行ずつ書いてある文を読む

途中で改行のない文章で練習するのもおすすめです。(縦書きの場合)読むときの目の動きが上下のみになり、「今どこを読んでいるのかな」と混乱してしまう可能性が低くなります。

読み聞かせをしてもらう

音読に取り組む工夫として、読み聞かせをすることも効果的な方法のひとつです。

音声情報と意味を頭の中で結び付けるトレーニングになりますし、正しい区切りで保護者が読んであげることで、音のリズムを身につけるきっかけにもなるでしょう。

また、文を読むのが苦手な子は、音読の練習を繰り返すとすぐに疲れてしまうかもしれませんが、読み聞かせであればお子さんにとって負担が少なくてすみます。

もし保護者が可能であれば、適度におこなってあげるのもおすすめです。

まとめ

お子さんがうまく音読ができないと、「はやく身につけさせたい」と焦ってしまう保護者も多いかもしれません。ただ、文を目でうまく追うことができない子の中には、その原因が心理的なプレッシャーや緊張にあるといわれる場合もあるようです。

焦らずにできる工夫からひとつひとつチャレンジし、取り組めたら「頑張ったね!」と励ましてあげるなど、コミュニケーションを取りながら進めていくのが良いですね。

ことばパークは講師とのやりとりを通じて、お子さんの「学びたい」という気持ちを引き出しながら、聞く力・話す力・読む力をバランス良く伸ばしていけるオンラインレッスンです。お子さまの意欲と学力を伸ばしたいとお考えでしたら、ことばパークをぜひご検討ください。

執筆者:杉本啓太

参考サイト:

子どもたち一人ひとりに、最適な学びを――人間支援工学の挑戦

https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/frontrunner_mtakahashi.html

黙読と音読での読解活動における眼球運動の比較

https://www.jcss.gr.jp/meetings/JCSS2011/proceedings/pdf/JCSS2011_P2-9.pdf

ディスレクシア・読字障害(前編)…症状と音韻処理 

https://kidsinfost.net/2017/10/15/ogatty-14

「音読」を甘く見る人が知らない驚きのメリット

https://toyokeizai.net/articles/-/612024

【音読の宿題には意味がある!】脳の先生が教える脳活性音読が育む8つの力と、加藤式音読のコツ https://kosodatemap.gakken.jp/learning/book/29540/

「音読がキライ、苦手」な子に試してほしい効果的なかかわり方

https://enfant.living.jp/mama/mamnews/mei/925010

音読が苦手で文字をスラスラ読めない子どもにオススメ!1年生でも簡単にできる2つのサポート

https://desc-lab.com/mizumotoshiori/967

音読で見られる子供のつまずきと原因

https://cogtorejuku.jp/2020/07/09/reading-2

音読がたどたどしい原因は?【もっと楽にできる対処法3選】

https://defourunity.com/reading-aloud-poor