近頃「語彙力が足りない」といったお悩みの声をよく耳にします。知識量だけの問題であれば「覚えるだけ」といった解決策となるかもしれませんが、そう話は単純ではありません。そもそも「語彙力」とはどのような能力なのでしょうか。
今回の記事では、語彙力とは何か、語彙力を鍛えることで学習にどのような影響があるのか、小学生が語彙力を鍛えていくためにはどのような点に気をつければよいか、について解説していきます。
焦って知識を詰め込むのではなく、語彙力やその影響について理解したうえで、学習の基盤となる語彙力を鍛えていきましょう。
デジタル大辞泉によると、語彙力は「その人がもっている単語の知識と、それを使いこなす能力」と説明されています。
たとえば、「目を輝かせる、という言葉の意味は?」と聞かれたときに「ものごとに感動したり、喜んだりしていること」と答えられれば知識を持っているということができるでしょう。でも「使いこなしている」状態となると、たとえば「文章の中で『さとし君は目を輝かせながら』という表現を見て『さとし君は喜んでいるのだな』と理解することができる」「友人が好きな芸能人に会えて喜んでいる光景を見て、『目を輝かせている』という表現が頭に浮かぶ」など、日常の場で自然にその語彙を活用できてほしいところですね。
このように語彙力とは、「単語そのものの意味は理解したうえで、情報を受け取るときや伝えるときに自由自在にその単語を使うことができる力」と理解することができますね。
文部科学省の小学校学習指導要領解説でも、語彙は「全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となる言語能力を支える重要な要素」とされており、指導要領改訂にあたり語彙指導の改善・充実が行われています。
語彙力を鍛えることは、なぜこれほど重要といわれるのでしょうか。
語彙力を鍛えることで、文を読むとき、人と会話するときなどに受け取る情報量が増大します。
たとえば、子どもが「あるスポーツ選手が今回の大会で大きく躍進した」という記述を見たとします。このとき「躍進」という単語を知らなければ、何が書いてあるのか理解できないでしょう。そして、この文が理解できなければ、その後の文を理解するのも難しくなるかもしれません。
逆に「躍進=大きく進歩した」という意味を知っていれば、その文を理解できるだけでなく、「どんな活躍をしたのだろう」と考えながら後の文に進むことができます。
また、文でなく日頃の会話や国語以外の授業などについても同じことが起こり得ます。社会の授業で「北条家が繁栄しました」と先生が話したときに「繁栄」の意味がわからなければ、その後の内容が頭に入ってこなくなる可能性があります。
ひとつの単語を理解できるかできないかの影響は、その単語の含まれる文だけにとどまらないのです。
語彙力を鍛え理解できる部分が増えることで、その他の「まだ理解できない部分」を理解しようとするモチベーションとなることは多くあります。
これを外国語におきかえるとわかりやすくなります。英語の学習で「わからない単語がたくさんある文だと読む気もなくなってしまった」という経験は、それにあたります。」
語彙力を鍛え、文章の中で意味がわかる部分が増えてくると、わからない部分に対しても「この言葉さえわかれば意味がわかるのに」と考え、より語彙を増やそうとするモチベーションとなる場合があります。
語彙力を鍛えることで、読む・聞くだけでなく、書く・話すといったアウトプットの表現が豊かになります。伝えるのが難しい内容でも、適切な語彙を知っていれば、細かいニュアンスまで正確に表現し、伝えることができますね。そして、より潤滑なコミュニケーションが期待できるようになるでしょう。
ここからは、語彙力を鍛える方法について解説します。
新しい単語を学ぶとき、すでに子どもが理解している単語の中で、似ている言葉をもとに教えてあげるよう意識してみてください。そして細かいニュアンスの違いがある場合には、後からその違いだけを重点的に理解する、という順番で理解を促してみましょう。
たとえば、「目を皿にする」という言葉であれば「目を大きく見開いている様子」という形でまずは理解するとよいですね。そのうえで「目を大きく見開くときであればいつも使えるわけではなく、驚いたときや何かを探しているときなどに使うんだよ」と伝えてあげてみてください。
単語の意味を、まず子ども自身がすでに知っている似た単語や、その組み合わせでとらえることで、単なる文字列の暗記ではなく、具体的なイメージをもちやすくなるでしょう。
理解した言葉がどのようなシーンで使われるかは、具体的なイメージとセットで記憶していくと定着しやすい場合が多いです。
漫画や小説、ドラマや映画のワンシーンでもよいですね。「これこれ! この表情が『目を皿にする』ってことだよ。」と伝えてあげてみてください。
「学んだ単語の意味や使い方を言葉で説明できること」「実際にその単語が当てはまるシーン例を頭に浮かべることができること」の両方ができるようになることを目標としましょう。目指すところは「使いこなせる語彙」です。
新しい単語は、理解してもすぐに忘れてしまう子どもは多いでしょう。そうならないよう、日常の中でなるべく使う機会を作ってあげるのがおすすめです。使っているうちに、語彙が「単なる知識」ではなく「実際のコミュニケーションをより詳細に、正確に行うために便利なもの」という認識となるよう促すイメージです。
また、すでに学んだ単語だけでなく、子どもがまだ知らない単語をあえて会話の中に組み込んでいくことで、より高い学習効果が期待できる場合もあります。語彙を身につけながら「今の言葉の意味は何だろう?」「他の言葉も知りたい」と思うようになれれば、どんどん語彙力は増えていきますね。
語彙力は、子どもの情報のインプット/アウトプットの量・質を左右し、すべての学習の質に関わる非常に大切な能力です。コミュニケーションの中の少しの工夫で鍛えていけますので、ぜひ日々の生活でも取り入れてみてください。
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執筆者:杉本啓太
参考サイト:
【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
語彙のない子どもと言わせない!語彙力を高めるために子どものうちからできる教育方法
【子どもの語彙力を鍛えるには】家でできる語彙力アップの方法
https://style.ehonnavi.net/ehon/2022/12/13_591.html
子どもの語彙力を増やす・鍛えるトレーニング方法5選!