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最近、子どもの読解力が低下している、という話をよく耳にします。

OECD(経済開発協力機構)が3年ごとに行っている、PISAと呼ばれる学習到達度調査があります。
世界79ヵ国、約60万人の15歳児を対象としたこの調査によると、日本の順位は「2012年:4位→2015年:8位→2018年:15位」と、順位上では次第に下がってきています。これを見ると、確かに他の国と比べると相対的に、日本の子どもの読解力は低下しているといえそうです。

このような状況の中で、小学生の子どもを持つ保護者は、子どもに対してどのように接していけば良いのでしょうか。

今回はまず「そもそも読解力とは何か」について確認します。そのうえで、読解力が低下している背景には何があるのか、読解力を高めるにはどうすれば良いか、についてお伝えしましょう。

読解力とは何か

OECDによると、読解力の定義と調査のねらいについて、以下のように説明されています。

読解力:自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと

学習到達度調査のねらい:義務教育修了段階にある生徒が、文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読み、これらを広く学校内外のさまざまな状況に関連付けて、組み立て、展開し、意味を理解することをどの程度行えるかをみる。

また、学習到達度調査において測定する能力は以下の3点となっています。

1. 情報を探し出す
テキスト中の情報にアクセスし、取り出す
関連するテキストを探索し、選び出す

2. 理解する
字句の意味を理解する
統合し、推論を創出する

3. 評価し、熟考する
質と信ぴょう性を評価する
内容と形式について熟考する
矛盾を見つけて対処する

これらを読むと、読解力とは、ただ「書いてある情報を受け取る」ということだけでなく、「必要な情報がどこにあるかを判断する能力」「書いてある情報が正しいかを判断する能力」「複数の情報から検討を進める能力」も含んでいると理解することができます。

読解力とは、国語の長文読解問題だけでなく、その他の科目の学習の土台ともなる、非常に大切な能力であるといえそうです。学校の学習だけでなく、日々の調べものや、社会人になってからもずっと必要となる力でもあるといえますね。

日本の子どもの読解力低下の背景

では、なぜ日本の子どもは読解力が低下しているのでしょうか。

情報を与えられることに慣れすぎている

文部科学省・国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」(以下、「PISA2018のポイント」)によると、「情報を探し出す能力」について平均得点が低下しています。

これは、保護者や学校、塾などで「これを読むと良い」とすすめられることに慣れすぎてしまい、「何を読みたいか」、また情報収集のときであれば「何を読むべきか」といった能力が低下してしまっていることが考えられます。

また、同調査において「③評価し、熟考する」能力の中の「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」についても正解率が低くなっています。

これも、情報を与えられることに慣れてしまい、「何を読むか」「何のために読むか」といった意識が希薄となっていることから起こっている可能性があります。

新聞やノンフィクションを読む機会が少ない

「PISA2018のポイント」によると、日本の子どもはOECD平均と比較し、コミック(マンガ)やフィクションを読む生徒の割合は多いものの、新聞・ノンフィクションを読む生徒の割合は少なくなっています。

スマートフォンなどによるデジタルデバイスでの情報収集が増えたことで、短文でまとめられた情報に慣れ、その反面、新聞・ノンフィクションなど読むのに時間がかかる長文を読む機会が少なくなってきている可能性があります。

また、人から人への情報伝達が主となるSNSでの情報収集の割合が増えることで、自分で能動的に情報収集をする機会が減っていることも考えられます。

小学生が読解力を鍛える方法

さて、ここからは、読解力を鍛える方法について解説します。

文字を読む習慣をつけさせる

まずは、本や文を読む習慣をつけましょう。子どもが興味を持ったものからで大丈夫です。小説でも、漫画でも、新聞でも、図鑑でも構いません。子どもが「読みたい」という気持ちを持てるよう促してあげるのが大切です。

もし読むジャンルが偏る場合でも「そのジャンルが好きな気持ち」は否定することなく、「こっちの本もこういうところがおもしろいよ」といった形で、興味の幅を広げてあげられると良いですね。

「何を読むか」から考えるよう促す

子どもが何かに興味を持って本を読もうとしたり、調べものをしたりしようとしたとき、「何を読めば良いか」「情報はどこにあるか」から考えるよう促してあげてください。

「これに書いてあるよ」と保護者が与えるのではなく、子ども自身で情報を集めることで必要な情報を探し出す力が身につくとともに、「情報の良し悪し」について考える視点が身につきやすくなるでしょう。

もちろん、いきなり自分で考えて探すことは難しい場合もあります。子どもが慣れないうちは、探すのをサポートしてあげるのがおすすめです。

読んだ内容について話す機会を作る

本を読んだ後は、ぜひ保護者と結果や感想を話す機会を作ってみてください。

物語であれば、思ったことや感じたこと、好きな登場人物の話や「自分ならどうする?」と子どもに問いかけるのもおもしろいですね。また、図鑑や調べものであれば「調べたいことは見つかった?」「もっと詳しいことが載っている本はどこにあるかな?」といった声掛けによって、次の機会を作ることにもなります。

「読んだ」という行動とその結果について「考えや感想を持ち、それをアウトプットする」ことが大切です。

まとめ

読解力は、ただ目の前の文字を読んで理解するというだけでなく、読む前・後の検討やその後の考察も含んだ、総合的な能力です。そして、人生において非常に影響範囲の大きな能力でもあります。

何を読むかを「考える」、どこにその本があるか「探す」、読んだ内容について「考える/話す」といった、「読む」前や後のさまざまな活動も子どもに促しながら、しっかりと鍛えていけると良いですね。

ことばパークは講師とのやりとりを通じ読解力を鍛えながら、「聞く・話す・読む」力をバランス良く伸ばしていけるオンラインレッスンです。お子さまの学力を伸ばしたいとお考えの保護者は、ことばパークをぜひご検討ください。

執筆者:杉本啓太

参考サイト:

国立教育政策研究所

OECD学習到達度調査

https://www.oecd.org/pisa/publications/PISA2018_CN_JPN_Japanese.pdf

文部科学省・国立教育政策研究所

OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf

読解力を鍛える6つの方法|豊かな人生を送ることができる

https://www.koov.io/column/1544

国語の読解力を伸ばすには?小学生の読解力を伸ばすために大人がサポートできること

https://www.889100.com/column/column027.html