「子どもに読書を好きになってほしいですか?」と聞かれたらどのように答えるでしょうか。「もちろん、好きになってほしい」と答える方が多いでしょう。
ただ「何のために読書をしてほしいですか?」と聞かれると、明確な理由やその先のイメージを答えられる方は多くはないかもしれません。読書によって、子どもはどのようなものを得て、どのような影響を受けるのでしょうか。
今回は、なぜ読書が大切といわれるかの背景についてお伝えしたあと、読書のもたらす効果について文部科学省の定義する「国語力」との関連性から解説します。そして最後に、読書をする習慣を身につけるための方法について紹介します。
読書は、国語力を鍛えるうえで極めて重要であると考えられています。
文部科学省「これからの時代に求められる国語力について」によると、読書が影響を与える力は次の4つの力です。
さらに読書は、国語の知識といった領域とも密接に関連しているため、国語力を高めるうえで極めて重要であるとされています。
また、国立青少年教育振興機構「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」によると、読書量について次のような結果が出ています。
「子どもの頃の読書量が多い人は、意識・非認知能力と認知機能が高い傾向にある」
「読書のツールに関係なく、読書している人はしていない人よりも意識・非認知能力が高い傾向があるが、本(紙媒体)で読書している人の意識・非認知能力は最も高い傾向がある」
認知能力とは「IQや学力といったテストなどで評価している能力」、非認知能力とは「物事に対する考え方、取り組む姿勢、行動など、日常生活・社会活動において重要な影響を及ぼす能力」のことです。文部科学省の定義する「国語力」と重なる部分が多い能力であることがわかります。
これらの調査からは、国語力を鍛えるうえで読書は非常に有効な方法である、といえそうです。
「将来国語力を高めるためのトレーニングになる」というだけでなく、読書をしたそのときに得られる知識や技能も、読書が大切である理由のひとつです。
たとえば、図鑑を読むことで身の回りの生き物や乗り物などについて知る子もいるでしょう。伝記を読むことで、偉人の考え方・生き方に触れる子もいるでしょう。科学ノンフィクションを読むことで、海外の野生動物の生態や研究方法について学ぶ子もいるかもしれません。
読書によって得たひとつひとつの知識が日々の生活の中で実際に役立つ場合もあります。そして得た知識によって、見たり聞いたりするものごとの理解度が上がり、さらなる興味や好奇心につながることも期待できます。
「国語力と密接な関係がある」と書きましたが、具体的にはどのような効果があるのでしょうか。読書と、身につく能力の例について、一つひとつ詳しくみていきましょう。
「感じる力」とは、相手の気持ちなどを感じ取ったり、社会的・文化的な価値にかかわる感性・情緒を受け止め、理解したりする能力です。情緒力、ともいわれています。
たとえば、小説やエッセイを読むことにより「このようなとき、この人はこのように感じることがあるのだ」「このような表情を見せるときは、この人はこのような気持ちなのだ」と、理解しやすくなります。「感情とそのときに表に出る表情や様子」「出来事と感情の動き」の組み合わせを数多く経験する、というイメージです。
このような経験を積むことにより、「表情や様子から逆に感情を読み取る」といった能力の向上も期待できます。
「国語力」における「考える力」にあたるものですね。分析力、論理構築力などを含む論理的思考力です。
たとえば、ノンフィクションや研究レポートなどは「何のために」がはっきりしており、章立てや段落の構成を学びやすい題材です。「目的が提示され」「その目的のために筆者が何を行い」「結論はどのようになった」といった構成の明確な文章に触れることは、そのような文章を理解する力を高めるとともに、子ども自身が何かを考えるときにも、道筋を立てて検討するトレーニングとなるでしょう。
語彙力はあらゆる学習の質を左右する重要な力です。本を読むことで、語彙・意味・使い方をセットで学び、語彙力を高めていくことができます。
どのような語彙力が向上するかは、本の種類によって異なります。論説やニュースでは一般的な熟語や単語、慣用句などの習得が期待できるでしょう。また、小説などでは特に感情・人の様子にかかわる言葉などを学んでいくことが期待できますね。
語彙力の概要や高め方については「全ての学習の基盤「語彙力」はなぜ大切なのか?鍛える方法とは?」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
読書習慣を身につけるためにおすすめの方法について紹介します。
いずれの方法も、無理に読ませるのではなく「子ども自身が本を読みたいと思うにはどうすれば良いか」「本を読むと良いことがある(インセンティヴがある)と子どもが思うにはどうすれば良いか」という方針で考えるのが良いでしょう。
「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、「興味・関心に合わせた読書経験が多い人ほど、小中高を通した読書量が多い傾向にある」という結果が示されています。
また「『1日に読むページを決めて読むこと』『著者がどのような人か理解してから読むこと』『学校や市の推薦図書を選ぶこと』を多く経験することは、小中高を通した読書量の少なさと関連していた」ともあります。
つまり、読む本のジャンルや、読み方、読む量や場所などをあまり強く指示しすぎると、かえって子どもの「読みたい」という気持ちを邪魔してしまう恐れがあるということです。
保護者から見て「このような読み方をすればより効果が上がる」と思うことはあるでしょう。ただそのようなときも、あまり強制はせずアドバイスに留めるくらいが良いかもしれませんね。
子どもが自分では手に取らないものの、保護者としては「このような本も読んでほしい」と感じることもあるかもしれません。そのようなときは、子どもの興味のあるものから少しずつ広げていくのがおすすめです。
たとえば、漫画は読むけれど小説も読んでほしい、という状況であれば、好きな漫画の小説版をすすめてみるのも良いですね。また、論説文に触れてほしいのであれば「漫画の移り変わり」といった、メディア史のようなテーマであれば興味を持てるかもしれません。
子どもが読書に臨みやすい環境を日頃から作っておきましょう。もし「読みたい」という気持ちがあったとしても、読みはじめるまでに何か面倒に思う要素があると、「今日はやめておこうかな」となってしまうかもしれません。
たとえば、場所について。自室で落ち着いて読む方が好きな子もいれば、リビングで読むのが好きな子もいますね。一人ひとり好みはありますので、子どもに合わせた環境を用意してあげられると良いでしょう。
本の置き場所は、読書をする場所の近くに設置するのがおすすめです。読みたいと思ったときに、すぐに読める環境であることが重要です。
また、子どもが読書をしている横で保護者がゲーム機を触っていたら、読書好きの子でも集中できなくなるかもしれません。場所だけでなく、保護者の行動も大切です。
子どもが読書をするときに、保護者も一緒に読書をするのも良い方法です。もし興味があれば同じ本を読んで、一緒に感想など話すことができれば、子どもにとっても読書の大きなモチベーションになるかもしれませんね。
まず、読書によってどのような成長をしてほしいか具体的にイメージしてみましょう。そして「読みたい」という気持ちを最大限に伸ばしてあげられるよう、声がけをしてあげてください。そうすることにより、より良い読書を子どもに促していけるでしょう。
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執筆者:杉本啓太
参考サイト:
文部科学省
これからの時代に求められる国語力について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo_kadai/iinkai_47/pdf/93622101_10.pdf
国立青少年教育振興機構
子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究~「読書離れ」の実態と、「読書好き」を育てるヒント~
https://www.niye.go.jp/files/items/6935/File/gaiyou.pdf
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