算数の学習において、「計算問題は得意だが、長い文章問題は苦手」という子の話をよく耳にします。また、「算数はずっと得意だと思っていたけれど、学年が上がって問題文が長くなってくると解けなくなってきた」という場合もあります。このようなとき、原因は「読解力」にあるかもしれません。
「算数なのに読解力?」と思われるかもしれません。しかし、算数で文章問題や複雑な問題に取り組む際は、読解力も必要となると考えられています。
ベネッセ教育研究所「『読解力』と教科学力の関係」においても、以下のような分析結果が示されています。
””「読解力」は国語科における「読む力」の影響を大きく受けながらも、「言語についての知識・理解」や「書く力」とも関連し、更には、一見関連がなさそうに見える算数/数学の学力スコアとも同程度の関連を示す。””
今回は、読解力がなぜ算数の文章問題と関係があるのか、文章問題が苦手な子はどのように克服すればよいかについて解説します。
文章問題が苦手な子の中には「1行題や計算問題であれば解けるが、問題文がある程度の長さを越えると正解率が落ちる」という子がいます。このようなときは、問題文を読み飛ばしてしまう癖があるのかもしれません。
たとえば、「和が18、差が6である整数A,Bを求めなさい」といった問題です。 これは、問題文の中にほとんど「問題を解くのに使う情報」しか含まれていないため、読み飛ばしは起きにくいと考えられます。
逆に、設定されている条件や情報が多い問題は、問題文が長くなってしまいます。そのようなときに、子どもによっては問題文のすべての情報を確認せずに、問題を解こうとしている場合があります。
また、いくつかの小問に分かれている問題も、読み飛ばしが起きやすいですね。「大問1右の図は平行四辺形を面積が同じ3つの図形に分けたものです。以下の(1)~(3)に答えなさい。(1)…」と問題文があったときに、「(1)…」から読みはじめてしまうケースです。大問1の後ろに書いてある設定、今回であれば「平行四辺形を面積が同じ3つの図形に分けたもの」という部分を読み飛ばしてしまっているのですね。
苦手な原因のひとつとして、このように、与えられたすべての情報を確認せずに問題を解こうとしていることが考えられます。
問題文を読むとき、単語と単語のつながりを誤ってとらえてしまい、意味が理解できていない場合もあります。
たとえば、以下の問題をご覧ください。
この問題を読んだときに「辺ADと垂直なのは何かな?」という質問に対して「点P」と答えてしまう子がいます。「点Pが、辺BC上にある」「PAが、辺ADと垂直になる」という主語と述語の関係がとらえられていないということですね。
このように、言葉と言葉のつながりを正しくとらえられず、条件を理解できない状況となっていると、問題を解くことは難しくなります。
問題を読むことはできるものの、解答を書いているときに間違ってしまう子もいます。そのような子は、「自分が今何をしているのか」を見失ってしまっているかもしれません。
たとえば、「10人の子どもに3個ずつリンゴをくばります。1個100円のリンゴを買うとき、全部で何円必要でしょう」といった問題を考えてみてください。
この問題で「3×10=30、30+100=130」としてしまう子がいます。そのような場合、「3×10=30」で求めたものが「リンゴの個数」であることを意識できていないと考えられます。
ある程度の難易度の問題では、「距離の比を求める」「距離を求める」「時間を求める」「到着時刻を求める」など手順が複雑になり、途中で求める答え以外の値の数も多くなります。
このようなときに、ひとつひとつ論理立てて考え、言語化するのが苦手な子は、「自分が今何を求めたのか」がわからなくなり、混乱してしまう場合があります。
ここからは、算数の文章問題が苦手な子が、少しでも取り組みやすくなるためのポイントについて紹介します。
問題文の中の情報に線を引きながら読むように促してみましょう。数字が書かれている部分だけでなく、「直線ABと直線EFは平行です」といった形で書かれている条件にも注意しながら取り組めると良いですね。
このように線を引くことで、まず問題文を最初から読むこと、条件を読み飛ばさないことが期待できます。さらに、もし問題文を読み飛ばしてしまったとき「どこを読み飛ばしてしまったのか」が明確になり、その後の反省ポイントが見えやすくなります。
式を解いて出た答えに、単位を書いてみる方法です。時間を出したのか、速さを出したのか、など「何を出したか」を意識してもらうのが狙いです。
もし出来るのであれば、保護者が口頭で「それは何を求めたの?」と聞いてあげてみてください。そのときに「時間」と言うだけでなく「A君が○○から××まで移動するのにかかる時間」といった具体的な形で答えられるようになれば、「何を出したかわからない」といった混乱をすることは減ってくるでしょう。
たとえば、「問題文を最初から読まない子」などの場合に有効な方法です。
保護者が横について、問題文を読むところを見てあげましょう。そして、もし問題文を途中から読みはじめたり、問題文を読む前に図やグラフに視線が向かっていたりする場合は指摘してあげましょう。
これ以外にも、前述の「問題文に線を引きながら読む」「単位を書く」などのポイントについても、保護者が横についてチェックしてあげることで、効果的に改善を促すことができますね。
「読解力」とは国語における重要な能力のひとつですが、他の科目にも大きな影響があります。それは、一見読解力とは関係なさそうな算数も例外ではありません。
算数のテストで点数が取れないときにも、原因がどこにあるかを考え、もし読解力に原因がある場合はそれに合った工夫を行っていくのが大切ということですね。
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執筆者:杉本啓太
参考サイト:
「読解力」と教科学力の関係
https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/gakuryokukoujou/2006/pdf/2006_03_01.pdf
小学生が文章問題に苦手意識を持つ理由と克服方法
https://www.sokunousokudoku.net/media/?p=9408
苦手な算数の文章問題を克服する7つの方法|原因もあわせて紹介
https://b-engineer.co.jp/chokomana/e-s-student/e-s-education/1134386